りぼんの読書ノート

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ローマ人の物語13「最後の努力」(塩野七生)

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毎年1巻ずつ15巻まで刊行される、塩野七海さん渾身の大シリーズ。最初は15年なんて気の遠くなるほど未来に思えたのに、ついに13巻まで来てしまいました。いよいよ、ローマ帝国の終焉に向けてラストスパート。

今回は「最後の努力」とのサブタイトルで、3世紀~4世紀にかけて、傾きかけたローマ帝国を立て直そうとするディオクレチアヌス帝とコンスタンチウス帝のお話。この巻のテーマを一言で要約するなら「なぜ、ローマは中世化したのか?」。

ディオクレチアヌスといえば、四方からの蛮族の侵入に備えて、帝国を2人の正帝と2人の副帝に4分割したことで有名です。これは効果があったようで、彼の治世の間、平和は保たれるのですが、彼の退位後には、4人の皇帝が内戦を始めてしまうのです。やれやれ。

内戦を勝ち抜き、帝国を再統一したのがコンスタンティヌス。「ザ・グレート(大帝)」と異名をもつ彼は、ミラノ勅令でキリスト教を容認し、コンスタンティノープルに首都を移します。

塩野さんは、彼に厳しい。「中世は彼からはじまる」とまで言い切っている。蛮族を防衛線で防げず侵入者を追撃する方法しかとれなくなったせいで各都市は城砦化を開始して、自由な往来が妨げられていく・・。まさに、「中世のはじまり」ですね。確かに、彼の時代の彫刻や建造物も、前時代より稚拙で中世的になっていくのです。

この2人がいなかったら、ローマは100年早く滅亡したと言われますが、塩野さんは逆に「延命させる価値があったろうか?」と問いかけます。生き延びたローマは、すでにかつての「世界市民」を生み出した、魅力あふれるパクス・ロマ-ナではなかったのですから。

早く次が読みたい! ローマの最後を見届けたい思いでいっぱいです。

2005/2