りぼんの読書ノート

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パーマネント神喜劇(万城目学)

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神様の世界でもノルマや人事があって大変なようです。最初に配属された縁結び専門の末社で千年も務め続けていた下級神に、昇格の話が持ち上がります。

密着取材に来たライターが覆面調査員だったり、後任のフリをした神宝デザイナーに振り回されたり、超VIP上級神から密かに審査されているのに気づかなかったりのドタバタが続くのですが、彼の判断はなかなかのもの。

恋人の依頼で優柔不断な青年の背中を押しつつも結局は人間の努力次第であると諭したり、まるで「ラ・ラ・ランド」状況の恋人同士への言霊打ち込みを悩んだりするのですが、おしゃべりは過ぎるものの一本筋の通った判断をしているのです。そもそも「願い」とは矛盾を内包しているのですから、ストレートに叶えてしまうことがベストとは限らないのですね。

しかし彼が昇格した転任先では、真の試練が待っていました。地震で倒れたご神木に閉じ込められた危機からは少女の祈りで救出されたものの、地球的規模のバランスを調整している大神様から、巨大災害を予告されてしまうのです。はたして彼はどうすることができるのでしょう。

フリーライター「ちはやふりー」に転身した覆面調査員とのコミカルなかけあいが楽しい一方で、日本人の超自然との向き合い方も考えさせてくれる作品でした。『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』のかのこちゃんも重要な場面でゲスト出演しています。

2019/6