りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

診療室にきた赤ずきん(大平健)

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ある方がブログで紹介されていたので、読んでみました。精神科医である著者が、患者に心の内を解放させるために童話やお伽噺を語り聞かせるエピソードが紹介されています。

親の過保護によって自立心を抑制されてしまった「眠り姫」。休息の時間を必要とした「三年寝太郎」。気移りして転職を繰り返す「幸運なハンス」。現実離れした理想の妻になどなれるわけもない「食わず女房」。転職を迷う女性に聞かせる「ぐるんぱのようちえん」。老夫婦の生きがいとなった「桃太郎」。

誰の中にも優しさと欲望と嫉妬があると諭す「赤ずきん」。優しい看護婦がいた病院から現実世界に戻った「浦島太郎」。激しい生存競争の世界を生きた「三匹の子豚」。母親の愛から自立しようとする「一寸法師」。愛情と恩返しを混同していた「鶴女房」。危ない仕事をして追いつめられた「ジャックと豆の木」。

良く知られた主人公たちが、実は患者と同じ症状を抱えていると指摘されることが、どうして治療に役立つのでしょう。主人公がハッピーエンドを迎えるからという理由ではありませんね。そうではないエンディングとなる物語もあるのですから。おそらくですが、それぞれの患者が抱えている問題が「よくある話」として、共感してもらえるというだけで解決に向かうのかもしれません。人の心の問題は、なかなか難解です。

2016/8