りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

桜庭一樹短編集

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2006年から2012年までに書かれた6作品を収録した短編集です。少女七竈と七人の可愛そうな大人赤朽葉家の伝説で颯爽とメジャーデビューした頃に始まって、現在に至るまでの時期がカバーされているんですね。年代順に並んでいますので、作品の幅が広がっていく様子を感じ取れるようになっています。

「このたびはとんだことで」
不倫男の固定視点から見た妻と愛人の攻防が、次第にドタバタ劇化していくのと対照的に、徐々に明かされていく「作品世界」の怖さが増していくのです。まだラノベ調を引きずっているような文体ですが、「桜庭ワールド」は既に出来上がっているようです。

「青年のための推理クラブ」
青年のための読書クラブの「幻のパイロット版」だそうです。短編集にするつもりだったのが、ひとつの纏まった作品になったため、浮いてしまったそうなんですね。

「モコ&猫」
大学生の「ぼく」が見つめ続けたのは、「胡麻油の瓶のように」不細工な女の子「モコ」でした。ぼくの彼女への執着は誰からも理解されなかったのですが、彼女自身も本当にわかっていたのかどうか。彼女がぼくの思いを貴重なものと理解したのは、それを失う直前だったですから。

「五月雨」
山陰出身の吸血鬼一族を追って山の上ホテルにやってきた少女猟師。伏 贋作・里見八犬伝の先触れのような作品です。

「冬の牡丹」
ずっと優等生だったのに、実家を出て派遣社員となり三十路直前の牡丹が、隣の部屋に住む老人と知り合います。「つまんねぇ子だけど、自分なりに一生懸命なんだろうかねぇ」と言われて、ホッとするという感じが、この作品の全てでしょう。

赤い犬花」
桜庭さん初の「少年視点」の作品だそうです。見知らぬ土地に預けられた少年が、出会ったばかりの少女と山に入っていく冒険譚・・だったはずなのに、物語は意外な方向に向かっていきます。まだ単行本化されていない『Bamboo(未読)』へと続いているとのこと。

2014/12