りぼんの読書ノート

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戦火の馬(マイケル・モーパーゴ)

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戦闘の前夜に希望と恐怖を馬に話しかけたという老兵の思い出話、馬と心を交わした少年の逸話、画家が描いた騎兵の突撃シーンという3つの要素から想を得て生まれた作品だそうです。

本書の主人公はジョーイという馬であり、ジョーイによる一人称で語られていきます。イギリスの農場で愛する少年アルバートとともに穏やかに暮らしていたジョーイは、軍に売られて戦場に引き出されますが、機関銃と鉄条網が登場した第一次世界大戦で騎兵が活躍することはありませんでした。騎兵隊は最初の突撃で無残に打ち砕かれてしまいます。

馬を愛した騎兵大尉は戦死。ドイツ軍の「捕虜」となり、傷病兵や大砲・砲弾の運搬に使役されて苛酷な戦場を行き来する中で、友となった駿馬にも先立たれたジョーイは、再びイギリスに戻れるのでしょうか。そして愛するアルバートとの再会は?

イギリスから大陸に送られた100万頭の馬のうち大半は戦死。戦場を生き延びた馬も多くはフランスに置き去りにされて、イギリスに帰れたのはわずか6万頭だそうです。しかも置き去りにされた馬の多くが食肉処理されたというのですから、哀しいですね。

馬の視点から書かれた本書は、イギリスにもドイツにも中立であるだけに、なおさら戦争の愚かさと戦場の苛酷さが伝わってくるように思えます。この物語に惚れ込んだスピルバーグが映画化したのも頷けます。

2012/3