りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

地球移動作戦(山本弘)

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2083年、超光速で運動すると仮定されている粒子タキオンを利用した推進機関「ピアノ・ドライブ」を実用化した人類は、光速レベルの宇宙船を開発。太陽系を超えて宇宙探索に乗り出した矢先に、ミラー物質(?)組成であるために今まで発見されていなかった、地球の600倍を越える質量を有する謎の天体が、24年後に地球と超接近することを知ります。

こんな天体に衝突されたらもちろん、スイングバイされるだけでも、壊滅的な被害が地球にもたらされることは必至です。人類は総力をあげて、地球を一時的に移動させ被害を最小限にとどめるための計画に取り掛かるのですが・・。

主人公は新天体発見時に12歳、X-Dayには36歳となる天才少女・風祭魅波。地球をリフトアップするという計画は、彼女の父親である天体物理学者の風祭良輔が発案したものであり、彼女は24年の歳月の全てを、その実施にかけるのです。

これが物語の縦糸とすると、横糸はAI とバーチャル・リアリティの進化した状況。この時代、ACOM(人工意識コンパニオン)と呼ばれる三次元映像のAIが既に個人レベルに普及しているんです。かなりオタク趣味ですけど・・。誰もがACOMを連れ歩く様子は、まるで『黄金の羅針盤』状態です。^^

魅波のACOMは、新天体を発見した宇宙飛行士の叔父から相続したマイカ。叔父の死によって、ペットロスならぬマスターロス症候群に陥っていたマイカとの間に育んだ奇妙な友情も読ませどころです。シオンとかレイブンとか、他の作品に登場したAI がACOMとなって登場するというのも、ファンには嬉しいもの。

終盤のクライマックスが「狂信者によるテロ対策」という展開にはリアリティがありすぎるせいか、物語的には少々興ざめ感があるのですが、「ハードSF」としてよくできている作品だと思います。「とんでも理論」満載ですけどね。

2009/12