りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

銀河のワールドカップ(川端裕人)

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とっても楽しい小説でした。就寝前にベッドの中で読み始めたところ、面白くてページを閉じることができないままに、翌日のことを顧みず一気読みしてしまったほど。翌朝つらかった・・^^;

「少年サッカー小説」なのです。選手としても指導者としても挫折した、元プロサッカー選手の花島勝が、公園で見かけた少年たちの天才的なサッカープレイに魅了されて、小学生サッカーチームの監督に就任。個性豊かなメンバーが大会を勝ち進み、ついにはスペインで銀河系軍団「レアル」と対決してしまうというありえない物語で、まるでコミックやアニメのようなのですが、監督の思いも少年たちも、とっても生き生きと描かれているのです。

小さなダイヤモンドの原石たちは、まず、外見はそっくりながら三者三様の個性を持ち、それぞれ天才的なプレイをするものの、指導者とソリが会わずにサッカーから離れてしまった三つ子たち。わざとディフェンダーの足に当ててオウンゴールを決めさせたり、わざと相手にボールをとらせてスペースを作ったりと、これじゃ型に嵌めようとする指導者では無理ですね。

他には、攻撃あるのみの不思議な天才ドリブラーや、身体の成長にとまどっているキーパー。完全に名前負けしている「翼」クンに、海外のイケメン・スター選手と会うのが望みの俊足の女の子に、その友人のダイエットだけが目的の不器用な女の子。

チームのモットーは「楽しいサッカー」。それは、ラインを揃えるとか、中盤でプレスをかけるとか、ロングボールを蹴り込むとかの監督の指示によるプレイではなく、「自由で発想豊かでゴールへの意志に満ちたサッカー」。

フィールドが眼に浮かんでくるようなサッカーシーンの描写も見事だけれど、時には硬くなったりも、萎縮したりも、白けたりもする子どもたちが、「楽しく」プレイする喜びを再発見していくあたりが素晴らしい。「この中でプロ向きの選手は?」と問われて、天才少年たちではなく「戦術眼のある翼」というのもいいし、チームで一番下手な玲華(ダイエットの子)が一番楽しんでいるのもいい。このチームが開花させた、自由なポジション・チェンジをする「渦巻きサッカー」だって、玲華が不思議なポジションに動いたことから始まったのでした。

無理矢理「レアル」に試合をさせた展開はかなり強引だけど、楽しいスポーツ小説でした。ところで「フランスの至宝ゼットン」はジダンで、「貴公子ベルバウム」はベッカムですよね。^^

2009/1