りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

地球でハナだけ(チョン・セラン)

韓国のSF・ファンタジー作家による、ピンクレディの「UFO」のような異星人とのラブストーリー。亜紀書房からシリーズ出版されている「チョン・セランの本」の5冊目は、26歳の時に綴った若書きの作品を10年後に書き直した本小説でした。

 

優しくてユニークな発想の持ち主ながら、ごく普通の韓国人女性であるハナは、つきあって11年になるキョンミンに振り回されてばかり。この夏休みもハナを置いて、流星群を見るためにひとりでカナダに出かけてしまいました。しかしカナダで隕石落下事故が起こって一時的に音信不通になった後、無事に帰国したキョンミンの様子がおかしいのです。人間的にもひとまわり成長したようで、いつもハナを気遣う優しさを見せるのです。いったい彼はもとのキョンミンなのでしょうか。

 

彼の正体が本人と入れ替わった異星人であることは、早い段階で明かされます。。オリジナルのキョンミンはひとりで宇宙の果てまで観光に行ってしまったとのこと。驚くのは、彼の母星から観察されていたハナが、異星人たちに大人気だったということ。殺伐としている地球でただひとり、ハナだけが宇宙的な生命の繋がりを理解している美しい存在だというのです。「君に会いたくて、二万光年を飛びこえたんだ」と言う彼は、ハナにプロポーズをするのですが・・。

 

異星人と人間との恋物語につきものの、身体や思考や感情の違いによる困難は適当に処理されていますし、彼が異星人であることに気付いたハナの友人たちも冷静に秘密を守り抜きます。かなり都合の良い作品なのですが、本書の本質はラブストーリーなので、全てが許されてしまいます。著者自身「もう2度とこれほど甘い話を書くことはできない」と言っているくらいですから。

 

2024/10