自ら千葉県北東部の限界分譲地に住み、YouTubeの「限界ニュータウン探訪記」で人気を博している著者によるドキュメンタリーです。2022年の本書の2年後に朝日選書から出版された『限界分譲地』とほぼ同じ内容ですが、こちらのほうが生々しい印象です。
千葉県北東部の北総台地に数多く点在する分譲地には「無計画な小規模宅地開発の遺物」という共通点があります。昭和の高度経済成長期の土地神話に乗った、中小の開発業者による投機型の開発であり、買い手もまた不在地主であったこと。交通利便性は悪く、上下水道・ガスなどのインフラもなく、後の法改正で建築不可となった造成地も少なくありません。バブル期に多少の住宅も建築されたものの大半は手付かずで、高齢となった所有者には「負動産」でしかない存在。所有会社の解散や、所有者の死亡で持ち主すら不明の土地も多いようです。
著者が限界分譲地に住み始めたのは問題意識を抱えていたからではなく、成田近辺で賃料の安い物件を探した結果の偶然だそうです。居住してわかった数々の問題点を調べていく過程で、情報のあまりの少なさに愕然としてブログや動画を立ち上げた結果、反響の大きさに驚いたとのこと。著者は自身の裁量で暮らし方を選べる現在の生活に満足しているようであり、限界分譲地の活用可能性の提言も行っていますが、放置されたまま荒れ地に返るところが大半であるように思えます。
2024/7