りぼんの読書ノート

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シネマ・シネマ・シネマ(梁石日)

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明らかに作者自身をモデルにした、在日韓国人作家のソン。飲んだくれの無頼派で、印税は前借りに消え、原稿遅れは日常茶飯事。そんな彼が巻き込まれた、映画制作に取り付かれた者たちの物語。

前半は、家族の絆を描いた在日女流作家の作品の映画化の話。なんと、彼が父親役に選ばれてしまいます。ロケ地の奈良で、韓国人監督と日韓スタッフたちが悪戦苦闘。大雑把で行き当たりばったりの韓国映画撮影手法に困惑し、トラブル続出ながら、ようやくの思いで映画は完成。ところが、配給先すら決まっていない!

後半は、彼の作品の映画化の話。先の映画化で通訳を務めた劇団出身の金がメガホンを取る。作品にほれ込み、通販会社で儲けた梁がスポンサー。ところが、金が続かない。つぎ込む金が一千万単位で消えていく中、通販会社は倒産の危機に。完成するのか、しないのか。一寸先は闇の世界。映画制作に取り憑かれた人間たちの悪戦苦闘は果てしなく続きます。

映画化された彼の作品『月はどっちに出ている』の実話でしょうか。ある意味、極限の人生を描いた、深みのある小説です。

2006/7