りぼんの読書ノート

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砂漠(伊坂幸太郎)

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「正しい」で感じた胡散臭さの口直しに、この本を読みましたが、伊坂さんには珍しくなんとなく後味の悪さを感じる本でした。

ストーリーや登場人物のキャラが悪いわけじゃない。仙台の大学入学直後に知り合った5人の仲間たちが、普通の学生生活をすごす間に出合った、いくつかの「事件」。メンバーの一人の女性関係のこじれからトラブルも起きて大怪我をした者もいるけれど、麻雀、合コン、バイトなど学生生活を楽しみ、異性との交際も楽しんでしまう。著者らしくヒネリも効いてるし、ごく普通の青春物語。

ではなぜ「後味の悪さ」を感じたのでしょう。それはきっと「砂漠」というタイトルのせいなのです。学生時代は、社会という「砂漠」に巣立つ前の「オアシス」であり、その時期が大切だったということが「砂漠」に出てからわかる。本当に、社会が「砂漠」だと思ってるのですか?

途中で軽い悪者役で登場し、メンバーからやりこめられる大人が、「中途半端な知識と経験しかない学生が、何事かを達成できるなんていうのは思い上がりで、危険な考え」と言って反感を買うのですが、むしろある意味で正論です。

「その気になれば、何かできるんじゃないか」と思うのはいいけど、具体的な努力なしでは何もできないし、謙虚な気持ちはいつでも必要なんて思ってしまうのは、年のせい?

クールビューティの東堂さんのことは、「アヒルと鴨のコインロッカー」に登場するペットショップ店長の麗子さんにそっくりのキャラで、好感持てますけどね。

2006/5