りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

花はさくら木(辻原登)

イメージ 1

時代小説を指して「大人のためのおとぎ話」と言った人がいます。童心を満足させてくれるような荒唐無稽なストーリーを、確固たる歴史の中で位置づけることによって、大人にも受け入れてもらえるための装置である・・という意味だったでしょうか。「義経伝説」などは、その後の時代における「時代小説」だったのかもしれません。

さて、本書も「おとぎ話」の楽しさを味わあせてくれる一冊。現在までのところ「最後の女性天皇」である後桜町天皇が、内親王時代に田沼意次と惹かれあっていたというのですから。もちろん高貴な方のお振る舞いに、下世話なことはありませんよ。

もう一人の主人公が架空の人物である菊姫です。江戸経済に打撃を与えて権力を奪取しようとたくらむ新興豪商・北風の養女なのですが、なんと淀君の末裔なんですね。もちろん徳川を恨んでいる北風は、自らの野望実現のために菊姫も役立てようとするのです。

自らの生い立ちを知った菊姫が、大親友の智子内親王とともに、田沼意次と手を組んで北風の野望を阻止にかかるのですが、幕閣としては豊臣ゆかりの菊姫をそのままにしてはおけません。江戸幕府、京都朝廷、大阪商人の思惑が交錯する中で、なぜ女帝擁立ということになったのか。そして日本に安住の地のない菊姫の運命はいかに・・。

とまぁ、こんな内容なのですが、楽しめますよ。ただ、内親王の気高さを全面に出そうとしたせいなのか、アクションシーンが、いまいち盛り上がらないのですけどね。

2006/5