りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

平原の町(コーマック・マッカーシー)

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国境三部作を締めくくる作品。第一部「すべての美しい馬」のジョン・グレィディと、第二部「越境」のビリーが、カウボーイ仲間として暮らす牧場。

馬の扱いにかけて天性の才能を持つ19歳のジョン・グレイディは、牧場主からも、カウボーイ仲間からも一目を置かれていましたが、国境を越えたメキシコの街の娼館で、幼い娼婦と恋に落ちてしまいます。第一部で、牧場主の愛娘と運命の恋をしたはずなのに・・。

ジョンを亡くなった弟のように思っているビリーは彼の無謀な恋愛に反対しますが、固い決意に説得をあきらめ、幼い娼婦の足抜けに力を貸すのですが、それは悲劇へ繋がる道でした。

「孤高のカウボーイ」のイメージは、前2作に比べて色褪せたようにも思えます。これは、西部テキサスという土地が、戦争や石油産業の発達によって変貌しつつあることと無関係ではないのかもしれません。主人公たちが目指す「国境の先」とは、現実のメキシコではなく、アメリカ西部が失ってしまった野性味溢れる世界であることが、三部作を通じて、行間に滲み出てきます。

第一部の馬たち、第二部のオオカミ、第三部の山犬と繰り返される、主人公たちと動物との触れ合いが、全て例外なく感動的なのも、そのせいなのでしょう。この三部作、冗長なところもありましたが、やはり傑作です。

2005/10