『安政五年の大脱走』は映画「大脱走」へのオマージュでしたが、本書もやはり映画「スティング」に捧げたものだそうです。
暴力団による地上げから老人ホームを守る区議を陥れた罠は、卑劣にも彼の息子をダシに使ったものでした。主人公の探偵と、彼の親友の遺児である女子東大生は巻き添えを食って、それぞれ失業、退学に追い込まれます。罠を仕掛けたのは、暴力団とつながりのある天才ギャンブラー。
真相を探り当てた4人は、天才ギャンブラーに対してプライドと未来を取り戻すため、10億円の大勝負に打って出る。もちろん、普通に勝負したのでは勝ち目がない。4人は、ポーカー台に仕込んだカメラで相手の手を全部読み取り、骨伝道スピーカーで指示するという、フェイクを仕掛けます。そんな手が天才ギャンブラーに通じるのでしょうか?
もちろん、意外な展開と、裏の裏をかく大どんでん返しが待っています。「バンディッツ」とちょっと似てるけど、「オーシャンズ11」より上かもしれません。この人、『安政五年』から、だいぶ上手になってるな。
探偵と、親友の遺児である女性との心の交流はヨコ糸。フェイクの基本はポーカーフェイスなのですが、こっちの方面では、その手は通じたのでしょうか・・。
2005/10