りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

靖国問題(高橋哲哉)

イメージ 1

アジア各国から批判を浴びる、首相の靖国神社公式参拝。タイムリーなことに、ちょうどこの本を読んでいたときに、大阪高裁で「公式参拝違憲」の判決が出されました。

著者の主張は明確です。「靖国は、戦没者の『追悼』ではなく『顕彰』の施設であり、英霊を神聖化して、次の戦争へ駆り立てる国家システム」であると。確かに、歴史・宗教・文化・政治の面から靖国を批判する著者の論理には、説得力を感じます。

国家が戦死者を顕彰しないと兵士の成り手が不足するとして、靖国神社を提唱したのは「福沢諭吉」だったそうです。戦没者は本人の了解なく国家の意思で祀られているので、個人的な分祀希望は許されないという「公式見解」は、理解しておく必要がありますね。それらを踏まえて著者は、今の政治システムが存続する限り、「国立追悼施設」を作っても「靖国化」は不可避と主張していきます。

この種の反戦論は、めいっぱい反論されるのでしょう。現代国民国家にとって、国民戦争は合理的・不可欠であって、戦没者の「顕彰」は必要な国家維持装置のひとつだとか、いろいろ言われてしまうのでしょう。でもそういう理論を言い出したら、現代国民国家には「憲法第九条」だってあり得ないってことになりかねない。

こういう問題には、すっきりした解決などありませんが、せめてA級戦犯分祀して、靖国で行う儀式を
戦没者「哀悼」目的に限定して欲しいものです。

2005/9