地方都市のしがない博物館で学芸員として働く手島沙良が発見した、体長15センチの謎の小さなおじさんは、過去に実在した人物でした。今は寂れている公園を整備するために私財を投げ打ったという槇原伝之丞に振り回された沙良が、殺人事件や河童復活事件に巻き込まれていきます。そしてそれは彼女自身の運命にも跳ね返ってくるのでした。
博物館を経営する温泉グループの社長と、その友人である工務店経営者はなぜ殺されたのか。犯人は誰なのか。その裏には横溝正史作品のような、複雑な家族関係があるのか。そして18年前に沙良を置き去りにして消息を絶っていた身勝手な母親の登場や、いきなり現れて沙良にプロポーズした都会のイケメンの企みは、どのような結末を迎えるのか。
地方都市特有のドロドロの人間関係は嫌いではありませんが、彼らと伝之丞、さらにはかつて伝之丞に公園整備を依頼した河童童子との繋がりが薄いので、深みは感じられなかった点がかなり残念。全く異なる3つの物語を無理やりくっつけたように思えてしまいます。もともと「小さいおじさん」とは都市伝説として広まった話であり、座敷童子などの妖怪系との説や「レビー小体型認知症」による幻覚とする説があるそうです。「孤独な人だけにしか見えない存在」とする著者の解釈は悪くはないのですが、もっと説明が欲しいところです。
2019/2