りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

獣の奏者4.完結編(上橋菜穂子)

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物語は悲劇へと向かって突き進んでいきます。

王獣の解放を願いながらも、王獣軍の訓練を続けなくてはならないエリン。妻エリンに王獣軍を使わせる前に戦闘を終わらそうと、闘蛇軍に身を投じたイアル。両親を案ずる気持を押さえきれずに荒れた姿こともありながら、心身ともに成長していく息子のジェシ。家族一緒に穏やかに暮らしたいという、彼らの望みは叶うのでしょうか。

リョザ神王国を統べる真王セィミヤも、新しい国の姿を模索している大公シュナンも、王獣を兵器として使いたくない気持ちに変わりはありません。それでも、東方の隊商都市群の領有権を巡る隣国ラーザとの関係が悪化していく中で、苦渋の決断を下さなくてはならないのです。あくまでも「為政者の論理」でしかないことはわかっていても、他の道はありません。

闘蛇の大軍が大地を覆い、王獣が天を舞うとき、過去に起こった「災い」が再現されてしまいます。長年慈しんできた王獣リランに乗ったエリンは、被害を最小限に食い止めようと、身を挺するのですが・・。エリンの母ソヨンの死で始まった物語は、ジェシへと引き継がれていくのですね、

「残された谷」に「残った人々」も登場して、過去の伝説も明らかにされましたが、まだ謎は残っています。そもそも王獣や闘蛇は、自然界の生き物なのでしょうか。それとも生物兵器として開発されて、人間の手に負えなくなった存在なのでしょうか。彼らは自然へと戻ることができるのでしょうか。外伝で、謎がいくらかでも解決することを、期待しています。

2015/7