りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

キングの死(ジョン・ハート)

イメージ 1

スコット・トゥローの再来」と激賞されたそうです。その呼び名に恥じない、読み応えのある本でした。

射殺された弁護士の息子に殺人の容疑がかけられます。やはり弁護士である息子のワークは、父を憎んでいた妹が犯人ではないかと思いこみ、彼女を護るために捜査を妨害するのですが、自分自信のアリバイを証明することができず、窮地に陥ってしまいます。

トゥローのように、法廷での丁々発止があるわけではありません。思いもかけない証拠によって二転三転する、スリリングな展開があるわけでもありません。この本は、事件を解決して父の死の真相を知ることによって、暴力的で傲慢だった父に職業も妻さえも決められ支配されていた自分の人生を取り戻し、兄妹愛を回復する物語なのです。

そういえばトゥローの作品の魅力の半分は、複雑に絡み合った夫婦や家族の関係に潜む問題を、事件と裁判によって表面化し、あるときは深まる愛を、あるときは断ち切られる絆を描くところにありました。もっとも大きな謎は、もっとも近い人間の中にある」のです。そういう意味でも、「トゥローの後継者」となりえる資格を有した新人が登場したと言えるのかもしれません。

2005/1