りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

闇の子供たち(梁石日)

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衝撃的な本です。どこまでが取材に基づく実話で、どこからが作者の創造なのかは判然とはしないのですが、いかにも、現実に起きていることのように思えるのです。

タイの小児売買。わずか8歳で実父により売春宿に売り飛ばされ、小児性愛者の玩具として弄ばれる少女。エイズを発病して商品価値を失うと、生きたままゴミ処分場に捨てられる少女。這いながら実家にたどりついても、両親からも疎んじられ、死を待つだけの少女。あるいは臓器提供者として、ブローカーを通じて売買される少女。

貧困が生み出す底知れない闇の暗さと、その事実を認めようとせず結果的に容認している権力機構の前に、NGOなどのボランテイア活動はあまりにも脆弱で無力です。私的暴力による恐怖に加えて、反政府団体として公的暴力による迫害すら起こるのです。

背後には、世界の富裕層に存在する小児性愛への欲望や、臓器提供の需要がある。それだけではありません。貧困国の貧困層をそのままに維持している世界的な政治経済の構造がある。とすると、富裕国・日本で不自由なく暮らしている私たち一人一人も加害者です。

では、何ができるのか。自分の利益を追求する生活からは、何も貢献できないように思えるけれど、だからといって、諦めてしまっていいのか。そもそも、そんな考えすら、甘い感傷にすぎないのか。

この人の小説は、想いが強烈な分、ラストがグダグダになることも多く、この本の場合も主人公のNGO団体職員・音羽恵子の「自分はここに残って活動を続ける」との決意すら救いとも思えない幕切れになっていて、小説としては完成度が低いとも思えます。それでも、張り倒されるような強烈な衝撃を受ける本であることは間違いありません。

2008/12