りぼんの読書ノート

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世界の歴史2「古代ギリシアとアジアの文明」(J.M.ロバーツ)

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「世界史を学び直そう」キャンペーンの第2巻。第1巻では、「人類の誕生」という長い先史時代を経て誕生した古代メソポタミアエジプト文明が、紀元前1000年を境に周辺民族の大移動によって相次いで滅亡に至る過程がテーマでした。

第2巻は、他の古代文明である中国とインドから入ります。著者は、アジアの両文明が、その孤立した地形のために、何千年にも渡って外部影響を受けずに独自の文化的伝統を保ち確立されたが故に、現代でも世界に大きな影響を与えていると総括。確かにインドのバラモン教にはじまるカースト制度や世界観、中国の儒教は、未だに数多くの者の行動を律していますね。

西方では、紀元前13世紀のクレタ・ミケーネがドーリア人のギリシア進入によって滅亡した後、500年の混乱を経てギリシア都市国家群が誕生し、地中海への殖民も始まります。同時期、オリエントに空前の大帝国を打ち立てたアケメネス朝ペルシャの侵略を、スパルタ・アテネを中心とするペロポネソス同盟が退け、ギリシャ都市国家の繁栄は絶頂に達します。

とはいえ、ギリシャ都市国家群の政治的栄光は短命でした。都市国家間の覇権争いによって、アテネもスパルタも覇権を失い、ついにギリシアは統一されることのないまま、マケドニアの軍門に下ることになるのでした。そしてヘレニズムの時代が訪れ、アレクサンドロスの死と共に分割された諸国は、ローマによる再統一を待つことになります。

著者は、ギリシア文明が生み出した、政治形態や哲学・科学の重要性を説くと共に、アテネ・スパルタでギリシア文明全般を総括すべきではないとの立場を取ります。それ以外の都市国家の性格は不明のまま現在に至っているとのことですが、周辺の多様性が、アテネの民主制や哲学・科学を生み出す源泉になったのかもしれませんね。

2007/1