りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

虚子とホトトギス(秋尾敏)

イメージ 1

散文ばかり読んでいる私には俳句なんて遠い世界ですが、現代が俳句と句誌にとって大変革が求められている時代となっていることは、感覚として理解できます。外国語で詠まれる「Haiku」にどう向き合うのか。ネットや携帯という新しいメディアをどう取り込むのか。

100年以上も刊行され続けている句誌「ホトトギス」は文学界には稀な長寿誌ですが、常に変わり続けることによって激動期を生き延びてきた、というのが著者の主張。その変革体質は、やはり激動の時代だった近代俳句の黎明期に「ホトトギス」を立ち上げた高浜虚子が形作ったものであり、今こそ虚子の軌跡を学ぶ必要がある・・という本ですね。

でもそんな大上段に振りかぶった前置きは横において素直に、若き虚子の苦悩を経てのサクセスストーリーとして読んでかまわない・・はずです。たぶん。

松山でわずか300部で創刊された同人誌のホトトギスを東京に移し、草創期の博報堂を通じて宣伝を集めて全国展開。子規の新しい俳句論を世に広める内容に改め、子規の死後は「写生」に基づく新俳句を広く読者から募集し、読者の中から次の世代をリードする俳人たちを育成するに至る物語。文中で多数紹介される俳句の良さが理解できれば、もっと楽しめたのでしょうが。

2007/1