りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

アラトリステ2異教の血(アルトゥーロ・ペレス・レベルテ)

イメージ 1

このシリーズが人気を博した理由は、単なる冒険譚に留まらず、スペインが世界最強国から転落しようとしている黄昏の時代の社会の雰囲気を味わうことができるからでしょうか。

若くて国民の人気はあり芸術の保護者としては名高いものの、国政については寵臣に任せ切りだったフィリペ4世。騎士道をもてはやしながら、上辺をつくろうだけの騎士たち。そして異端審問の名のもとに密告が奨励される暗い社会。その結果、スペインは国民国家の形成の点で、英・仏・蘭に大きく後れを取り、ユダヤ系の大商人たちが国外脱出したため、新大陸貿易で得た富も、国内に留まることがなかったのです。

そんな時代でも、庶民たちは生きなければなりません。彼らが必要としたヒーローこそ、信義に厚く勇気があって庶民の代表でありながら、異端審問官にも楯突く力を持ち、真っ当な権力者とは友人関係を保ち、時には国政を正せる、アラトリステのような男であったのかもしれませんね。

第2巻では、アラトリステと親友ケベードのコンビが、異端審問官ボカネグラの罠に落ちた亡き戦友の息子イニゴの救出に乗り込みます。

もちろん、おもしろく読めますよ。作中で紹介されるケベードのソネットやデシネット(十行詩)が、
日本語訳ではリズム感を失っちゃうのが惜しいですが。いや、スペイン語では理解できないから仕方ないんですけどね。

2007/1