りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

こちら横浜市港湾局みなと振興課です(真保裕一)

昨年夏に久しぶりに横浜港周辺を散策しました。大桟橋と象の鼻防波堤、キング・クイーン・ジャックの横浜三塔、開港資料館に海岸教会、赤レンガ倉庫にマリンタワー、そして馬車道と中華街。やはり魅力あるエリアです。本書は、そんな街にある横浜市港湾局みなと振興課で働く若者たちを主人公に据えたお仕事小説兼ミステリ。

 

物語は、大量の仕事に忙殺されている下っ端職員の暁帆のもとに国立大卒のエリート新人・城戸坂が配属されてくる場面から始まります。2人がコンビを組んだ途端、海外研修生の失踪、フォトコンテスト入選作の失格問題、豪華客船での幽霊騒動などのトラブルが発生。どれも小さな事件であり、対人関係に若干の難があるものの優秀な城戸坂はあっさり解決。しかし元キャスターで新人市長の神村佐智子や、彼女に敵対する地元選出国会議員や大ホテルのオーナーも、それらの事件に異常な関心を示しました。実はそれらの事件は、横浜が戦前から抱えている暗部と繋がっていたのでした。

 

はじめは城戸坂ひとりが名探偵役を努めますが、中盤以降活躍し始める暁帆の成長ぶりがいいですね。彼女が少女時代に見て憧れた横浜港での光景が伏線になっているラストまで、異国情緒あふれる横浜港で、「舞姫」や「氷川丸」や「シアトル航路」や「往時の船員下宿」などの歴史を織り交ぜながら、テンポよく進むストーリーは、読者を飽きさせません。

 

2024/5