読書ノート仲間のガラがお勧めしていた真保さんの本です。
職を失い妻子と別居中の34歳の男が、高校時代のライバルから誘われる。「次の衆院選に立候補する。共に戦ってくれ」と。コネなし。金なし。知名度なし。あるのは理想のみ。政党に所属せず、昔の同級生たちだけが頼りの選挙戦。現職と既成政党に有利な選挙制度。めちゃくちゃ金のかかる選挙活動。ちょっと目立つと悪質な妨害もされる。妻の無理解や、昔の恋人を巡る確執も足を引っ張る。彼らの想いは、有権者に届くのでしょうか・・。
作者が後書きで言っています。エンターテインメント小説には、強力な「敵」が必要であり、この本の場合には、「選挙」そのものが打倒すべき「敵」にあたる。でもそんなことよりも、この小説を通して有権者の意識を少しでも変えたかった・・と。
実は本書の中では、候補者の政治的スタンスはいっさい出てきません。靖国問題も、景気浮揚策も、郵政民営化も、憲法問題も、いっさいなし。「変わるべきは有権者の意識の方であり、一票を有効に使おう」との青臭い民主主義信仰とも言える、一般的な主張のみ。
小説として成り立たせるためには、仕方ないのかな。政治小説では大先輩のジェフリー・アーチャーが書いた、「めざせダウニング街10番地」や「ロスノフスキ家の娘」でも、具体的な政治的主張は、いっさいありませんでしたから。小説としては、面白く読めましたよ。
2006/8