りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ドラママチ(角田光代)

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人生のどこかで、立ち止まってしまったままでいる女たち。「こんなはずじゃなかったのになぁ」と思いながら、皆そこから一歩を踏み出すための「何か」を待っています。

その「何か」とは、人それぞれ。妊娠、恋愛、プロポーズ、ドラマチックな出来事・・。待っているだけでは「何か」は決してこないことは、わかってる。それでも皆、立ち止まった場所の周囲を逡巡してしまう。

絶対浮気に縁がないと思っていた夫の愛人宅をストーカーしたり、逆に長年の愛人関係に疲れた女性が相手の家庭を見に行ったり、意地悪い姑がいなくなることを願ったり、しちゃうんですね。

もちろん、心に思い描いたような「何か」はやってきません。でもジタバタしてみるだけで、物事は動き出すこともあります。カッコ悪くても、ちょっとズレていても、自分のできるやり方で一歩を踏み出してみる、30代の女性たちの物語です。

ところで、「待ち」は「町」でもあります。8編の作品すべてが、中央線沿線を舞台にした物語。阿佐ヶ谷、高円寺、荻窪、吉祥寺。こういう物語に、ふさわしい町かもしれません。主人公たちとは状況も年齢も違いますが、中央線沿線で暮らした学生時代を思い出しました。

2006/7