りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2006-12-15から1日間の記事一覧

人生激場(三浦しをん)

三浦しをんさんが「週刊新潮」に連載していたエッセイです。彼女、こんな愉快なキャラだったんですね。もちろん作家だけのことはあって、古典や純文学も好きだけど、コミック大好き。バンドの追っかけ。日韓W杯の時期でもあり、サッカー選手にはまりまくる。…

世界の歴史1「歴史の始まり」と古代文明(J.M.ロバーツ)

高校の虚偽履修問題でショックだったのは、ごまかしそのものより「世界史を学ばない学生がいる!」という驚きでした。そりゃあ範囲が広くて入試科目として人気がないのはわかるけど、世界史を知らなかったら、日本のことだってわからない。これだけ「グロー…

新宿鮫9・狼花(大沢在昌)

新宿鮫シリーズも、はや9作目。シリーズがはじまった16年前から日本は大きく変わりました。中でも一番変わったのは、外国との距離感かもしれません。新宿という土地柄もあり、シリーズのかなり早い時期から「外国人犯罪」はひとつの大きなテーマだったわ…

一瞬の風になれ1~3(佐藤多佳子)

3ヶ月連続で全3巻が発行された、話題の本です。三浦しをんの『風が強く吹いている』に続く陸上小説。「走る」ということは「風を起こす」ってことなんですね。 天才的なスピードを持つけれど、根性も体力もない「連」と、サッカーで将来を嘱望される兄に劣…

ローズガーデン(桐野夏生)

桐野さんをメジャーデビューさせた「村野ミロ」は、乃南アサにとっての「音道貴子」のようなものでしょうか。でも、作品のティストも主人公のキャラもだいぶ違います。そのひたむきさに爽やかささえ感じさせる貴子に対して、あくまでも暗い情念を漂わせるミ…

水の眠り・灰の夢(桐野夏生)

桐野さん本人をモデルにしたような、女性探偵・村野ミロ。彼女の出生の秘密にも触れた本書は「シリーズ番外編」かな。 主人公は、当時まだ20代の、ミロの父親である村野善三。昭和30年代、オリンピック前夜の変貌しつつある東京が舞台。「トップ屋」とし…

オノ・ヨーコという生き方(アラン・クレイソンほか)

オノ・ヨーコという女性をジョン・レノンの付属物としてではなく正面から取り上げた本は、はじめてかもしれません。ジョンに出会う前の生い立ち、ジョンの死後の活動に加えて、キワモノと思われがちの彼女の芸術にも正当に評価を加えています。ヨーコを世界…

女子バレーの女神たち(吉井妙子)

先週まで、『2006世界バレー女子大会』が開催されていました。日本は6位に終わったけれど3位のセルビアを破るなど健闘して「北京の奇跡」にちょっぴり期待を繋ぎました。もちろん視聴率的には大成功。アイドルタレントによる応援を白眼視するファンも多い…

かもめ食堂(群ようこ)

群ようこさんが映画のために書き下ろした小説です。フィンランドはヘルシンキの街角に、ひっそりと開店した「かもめ食堂」の日本人女性たちが、異国に溶け込んでいく物語。 そもそも、なぜヘルシンキなのでしょう。武道家の父親に厳格に育てられて食品会社に…

星々の生まれるところ(マイケル・カニンガム)

これはファンタジーなのでしょうか。150年前のアメリカが生んだ大詩人ホイットマンの詩の一節、「僕に属する原子は全て君にも属する」が繰り返される三部作。 150年前のニューヨーク。兄サイモンを工場の事故で亡くしたルークは、機械の中に兄を感じ、…

いまここに在ることの恥(辺見庸)

『もの食う人々』で鮮烈にデビューした硬派ジャーナリストの辺見さんですが、一昨年、脳溢血からガン手術を経験して、その主張は一段と鮮烈になったようです。 本書の冒頭に収められた「炎熱の広場にて」では、25年前にタイ・カンボジア国境の難民キャンプ…

あしたはドロミテを歩こう(角田光代)

TV番組の取材で、雪深いイタリア・ドロミテアルプスでのトレッキングを経験した角田さんの、旅行記です。 トレッキングといえば、草原を気持ちよく歩いて軽く汗をかき、見晴らしの良い所でお弁当を広げる・・との思い込みは裏切られ、重装備をさせられて、…

ヴィドック(ジャン=クリストフ・グランジェ)

『クリムゾン・リバー』や『狼の帝国』などの傑作ミステリーの著者が自ら映画の脚本を書いた・・というので軽く期待したけど、全くのガッカリもの。 19世紀のパリ。フランス革命後の混乱の時代。凶悪犯から警官や私立探偵へと転じた実在の英雄・ヴィドック…

むかしのはなし(三浦しをん)

おとぎ話を現代に翻案した7つの物語。実はこれらの話は「現在」ではなく「近未来」の話です。その事情は、だんだんと明らかになってくるのですが・・。 ラブレス(かぐや姫) 愛してもいない、危険な女に手を出してしまったホストの話。かぐや姫は消されて…

マダムの幻影(藤本ひとみ)

藤本ひとみさんの、渾身の一作。文庫版は『マリー・アントワネットの遺言』と改題されたようですが、オリジナルのタイトルのほうがずっといい。 ナポレオンがエルバ島を脱出する直前の短いルイ18世時代。革命・帝政・王政復古と巡る時代の嵐に翻弄された者…

カリフォルニア・ガール(T・ジェファーソン・パーカー)

この人の本は、ミステリーであって、ミステリーを超えているように思えます。2度目のアメリカ探偵作家クラブ最優秀賞を受けたのも頷けます。 『サイレント・ジョー』、『コールド・ロード』に次いで3冊目ですが、犯罪捜査を通じて浮き上がってくるものは「…

ページをめくれば(ゼナ・ヘンダースン)

著者は1960年代のSF作家だそうです。本書は当時の短編集だけれど、時代遅れ感は全くありません。学校の先生だったせいか、子供の感性が伸びやかに描かれています。 ほとんどの作品に登場する、異星人の子供や、特殊な力を持つ子供。そんな不思議な子供…

王妃の離婚(佐藤賢一)

佐藤賢一さんの初期の傑作です。最近では、アメリカの禁酒法時代や近未来、日本の戦国時代にも題材を求めているけれど、やっぱりフランスものが一番面白い。 15世紀末、ルイ12世からの離婚申し立てに対して、たった一人で気丈に闘う、王妃ジャンヌ・ドゥ…

世界は村上春樹をどう読むか(柴田元幸ほか)

現在、世界で最も愛読され、売れている日本人作家は、川端でも谷崎でも三島でも大江でもなく、村上春樹さん。チェコの「国際カフカ賞」を受賞したのも、まだ記憶に新しい。今年の3月、17カ国・23人の翻訳者や出版者が一堂に会して村上春樹の魅力につい…

風の墓碑銘(乃南アサ)

「女刑事・音道貴子シリーズ」は、大好きな作品です。男社会の警察で偏見にさらされ、悩みながらも真摯さを失わない主人公の姿勢に好感を持てるのです。 今回は、久々の長編で、しかも「あの」滝沢とのコンビ復活。久しぶりの滝沢は50をすぎて頭も薄くなり…

ロリータ(ウラジミール・ナボコフ)

「ロリコン」の語源としてあまりにも有名になってしまったせいで、センセーショナルでスキャンダラスな印象がつきまとう作品ですが、「言葉の魔術師」ナボコフの精緻な表現が素晴らしい傑作です。 ストーリーは単純なのです。少女趣味の中年男性ハンバート・…

風が強く吹いている(三浦しをん)

4年生の「ハイジ」と1年生の「走」。2人のワケアリランナーの出会いが箱根駅伝への挑戦の始まりでした。メンバーは、同じ下宿に住む陸上とは縁のなかった10人。 もちろん、気まぐれや思い付きで箱根を走れる訳がない。長距離会のエリートたちが何年も何…

この世の果ての家(マイケル・カニンガム)

作者の『めぐりあう時間たち』は、異なる時代を生きながらそれぞれ同性を愛してしまった3人の女性が主人公でしたが、この本はゲイの少年たちの人生を描いた物語。 孤独を癒すように惹かれ合った13歳のボビーとジョナサン。やがて2人はニューヨークで、年…