りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

星々の生まれるところ(マイケル・カニンガム)

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これはファンタジーなのでしょうか。150年前のアメリカが生んだ大詩人ホイットマンの詩の一節、「僕に属する原子は全て君にも属する」が繰り返される三部作。

150年前のニューヨーク。兄サイモンを工場の事故で亡くしたルークは、機械の中に兄を感じ、兄の婚約者キャサリンを救うために自らの命を差し出します。

現在のニューヨーク。子供を亡くした犯罪心理学者キャットは、自爆テロ集団の少年にわが子と同じルークの名を与え、恋人サイモンと別れ職を捨て、彼とともに生きる道を歩みます。

未来のニューヨーク。人造人間サイモンは、異星人カタリーンとともに西部へ向かい、汚染されて取り残された街で自警団の少年ルークに助けられ、新世界を目指す宇宙船(未来のメイフラワー号!)に乗り込む人々を見送ります。

作者は、本書についてに語っています。150年前にアメリカが世界で最も寛容な国になるとの夢を希望に満ちて歌い上げたホイットマンの詩を繰り返すことが、「そうはならなかったアメリカ」を思い起こさせてくれると・・。

また作者は、登場人物の1人に語らせています。ホイットマンとは「毎日12時間、週に6日の重労働を繰り返す労働者」に、「君は唯一の存在で素晴らしい」と思わせる詩人だと。う~ん。それってSMAPじゃん。^^;日本が、「世界にひとつだけの花」を口ずさむ少年テロリストが現れるような社会にはなって欲しくはないけど・・。

めぐりあう時間たち』や『この世の果ての家』に比べると小説としての完成度は決して高くはないのかもしれませんが、深く印象に残る本です。

2006/11