りぼんの読書ノート

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カリフォルニア・ガール(T・ジェファーソン・パーカー)

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この人の本は、ミステリーであって、ミステリーを超えているように思えます。2度目のアメリカ探偵作家クラブ最優秀賞を受けたのも頷けます。

『サイレント・ジョー』、『コールド・ロード』に次いで3冊目ですが、犯罪捜査を通じて浮き上がってくるものは「家族の絆」であり、更には「1960年代のカリフォルニア社会の変貌」に他なりません。エルロイが「LA4部作」で50年代のロスの暗部を描いたのにも匹敵するとも思える水準の作品を生み出し続けています。

1968年。カリフォルニア南西部の街にある、オレンジ出荷工場の廃屋で、頭部を切り落とされた若い女性の死体が発見されます。被害者は、刑事ニックたち兄弟が、子供の頃から知っていたジャニル。貧しい育ちで粗暴な兄たちから性的虐待を受けていたジャニルは、4年前のニックの告発によりニックの兄で牧師であるディビッドに保護され、愛らしい娘に育っていたはずなのに・・。

新聞記者になったニックの弟アンディも独自に調査を進めるうちに、彼女が麻薬の囮捜査にかかわっていたことや、妊娠していたことなど、新しい事実が判明し、有力な容疑者が浮かんできます。

一件落着と思いきや、全てが明らかになるのは36年後!!作者が描きたかったのは、この事件そのものの謎ではなく、事件の捜査によってそれぞれに転機を迎えることになった、ディビッド、ニック、アンディの3兄弟の人生なのでしょう。普通のミステリーに飽き足らない人には、お勧めです。

2006/11