たぶん、何が「正統派」なのかを論じることには意味はないのでしょうし、仮に正統派でないとされる作品だって、いいものはいいのです。だから定義なんかにはこだわらず、私の心に残った作品を紹介しましょう。
歌の翼に(トマス・M・ディッシュ)
「歌の力」によって精神を解放し「飛翔」した者はフェアリーになる。なんて魅力的なのでしょう。でも、幼い頃には母親に、ハネムーンの初日には妻に「飛翔」されてしまったダニエルにとっては、「切実な夢」以上の「人生の目標」になってしまいました。しかも、ダニエルには天分がなく「飛翔」することが叶わなかったのです。
貧しいダニエルは、戻ってこない妻の身体の管理費用を稼ぐために苦労を重ねます。皮膚の色を変えて黒人となり、カストラート唱法を学び、NYで成功を修めたダニエルが「飛翔」への最後の挑戦をかけた時、銃弾が彼を貫きます。ダニエルはフェアリーとなって、愛する妻と再会を果たしえたのでしょうか・・。高校の頃に出あった本です。大げさに言うと、生きることの厳しさを教えてくれた本かもしれません。
電脳空間に意識ごとジャックインしてハッキングを行う、サイバー・カウボーイ。契約違反の代償としてジャックイン能力を失い、チバシティで荒んだ生活を送るケイスに持ち込まれたのは、最もヤバいAIと言われる、ウィンターミュートに潜入することでした。全身武器の女性モリーらと、軌道上のAIに潜入したケイスを待っていたのは、ウィンターミュートと一体化して自我を持とうとしている謎の存在・・。
いわゆる「サイバーSF」の先駆的作品です。『カウント・ゼロ』、『モナリザ・オーバードライブ』と続くシリーズの第1作。この本によって、新しい世界を垣間見た気がしたものです。
放射能で汚染され、廃墟と化した地球。多くの生物が絶滅しているため、生物を所有することがステータスになっています。電気羊しか飼えずに本物を手に入れたいと願っているリックは、懸賞金を得るため、
火星から地球に逃亡してきた人間と見分けがつかない精巧なアンドロイドである、8体のレプリカント狩りの仕事を引き受けるのですが・・。
火星から地球に逃亡してきた人間と見分けがつかない精巧なアンドロイドである、8体のレプリカント狩りの仕事を引き受けるのですが・・。
映画『ブレードランナー』の原作としてあまりにも有名です。感情とは人間だけのものなのか。生命とは、知性とは、人間性とは? 1968年の時点ですでに「明るくない未来」を描いた先見性もさることながら、未だに様々な作品で繰り返し問われている問題を提起した伝説のSFですね。
とりあえず、こんなレポートでよろしいでしょうか? 『ファウンデーション(アシモフ)』も、『2001年(クラーク)』も、『ナウシカ(宮崎駿)』も、『月は無慈悲な夜の女王(ハインライン)』も、入れたいところだったのですが・・。
2007/2