りぼんの読書ノート

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世界の歴史3「古代ローマとキリスト教」(J.M.ロバーツ)

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いよいよ第3巻は、ローマ時代に突入して歴史っぽくなってきました。だいたい世界史を苦手な人は、ヨーロッパの中世で嫌になるようです。そういう意味でも中世時代は「暗黒時代」になりやすいのですが、中世を理解するためには、まず、ローマを知らなければなりません。

世界帝国としてパックス・ロマーナの秩序を打ち立てたローマが、どうして弱体化し、分断されて、封建領主が割拠する時代になったのか。底流を流れる精神は、ローマ時代からどう変わってしまったのか。実は私は、ローマの歴史は詳しいのです。塩野七生さんの『ローマ人の物語』を、ずっと読んでいますので。^^ 余談だけど、早く最終の第15巻を読みたいっ!

塩野さんは「キリスト教の不寛容の精神が欧州の中世化を助長した」と、ローマ帝国時代末期に広まり国教にまでなったキリスト教に批判的です。さらには、蛮族の流入を阻止できずに帝国内の治安維持を放棄してしまい、各都市が個別に城壁を張り巡らせるようになったローマにはもはや存在価値はない・・とまで言い切るのです。

本書の著者は、キリスト教には肯定的です。滅亡したローマ帝国の後継者はキリスト教であり、教皇制度と修道院制度が一体化して、1000年後に開花する欧州文明に引き継がれると言うのです。

たぶん、どちらも正しいのでしょう。治安が保てず、異教徒との戦いにさらされていたキリスト教が、先鋭化して不寛容になるのはある意味当然であり、欧州の政治経済が安定し各国の交流が再び深まってきてようやく、自由が尊重されてくるのでしょうから。ルネッサンスの大きな一翼は、ローマ教皇によって担われたわけですしね。

ともあれゲルマンの諸部族が欧州各地に割拠するに至って、ローマ帝国はほとんど自然消滅に至ります。「年表上の西ローマ帝国滅亡も、著しく領土を縮小しての東ローマ帝国の存続も、一般大衆には関係のないことだったろう」との指摘にはうなずけます。

2007/2