りぼんの読書ノート

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オイレンシュピーゲル肆(冲方丁)

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ミリオポリス警察組織・遊撃小隊ケルベロスの3人の特甲少女たちが巻き込まれた、ウィーン空港でのハイジャック事件には、秘せられた目的が潜んでいました。それは、国連都市で開かれる国際法廷での証言者を巡る戦いだったのです。ちなみに国連都市での戦闘は、姉妹シリーズのスプライトシュピーゲルでが描かれているとのこと。

ハイジャック事件の首謀者と見なされた男パトリックの意外な正体。その最中にいきなりステルス戦闘機で亡命してきた中国軍の女性パイロット。彼女を狙う、海賊版・特甲児童ともいうべき中国の非公式国外部隊「蟲(チオン)」と、4本の義手を持つリーダーの少女・蛭雪(ツーシュエ)。死んでオリオンの三ツ星になることを望むテロリスト岡本が受けていた犠脳手術。レベル3の特甲猟兵である双子のユング兄弟(陸王と秋水)の超絶的な破壊力。そして、謎の証言者。

黒犬・涼月も、赤犬・陽炎も、白犬・夕霧も、戦いの中で死線を彷徨い、通常のレベル1B装甲から、破壊力抜群のレベル3装甲を転送してもらうことになります。彼女たちは、精神に異常をもたらすレベル3の危険にも、身をさらすことになるのです。

スプライトシュピーゲル」の小隊長である鳳と、涼月との電話連絡がいいですね。互いに反感を抱きつつも、それぞれの状況はわからないながら情報を共有しあい、最後には協力していく少女たち。涼月の精神力の強さは、小説ながら感動ものです。

武器商人というよりテロ支援組織としての本性を顕わにしたプリンチップを代表する2人のトラクルの謎や、レベル3からレベル4へとグレードアップを続けていきそうな特甲猟兵の謎など、未解決の問題は数多く残されています。オレインとスプライトが合体して展開される、著者が「最後のライトノヴェル」という『テスタメントシュピーゲル』が楽しみです。まずは『スプライトシュピーゲル』を読んでしまいましょう。

2014/9