1892~93年にかけて米国「ストランド」誌に連載された作品を集めた、『シャーロック・ホームズの冒険』に続く第2短編集で、シリーズ4作め。
黄いろい顔:ホームズの推理が外れたけれど、ハッピーエンドとなった事件です。幸せな夫婦の関係を乱す、隣家に越してきた「黄色い顔」の正体とは?
株式仲買店員:ようやく転職先を見つけた株式仲買人に、破格のオファーが! 疑問を抱いた仲買人がホームズらを伴って行くと、雇い主は自殺をはかろうと・・。
グロリア・スコット号事件:ホームズが、学生時代の事件をワトソンに語ります。不意の客に怯える友人の父親には、オーストラリアへの流刑船でいまわしい過去が・・。
マスグレーヴ家の儀式:旧家に伝わる謎の儀式文と、失踪した執事の関係は? また、執事に振られていたはずの女中はどうして発狂したのでしょうか?
背の曲った男:美しい妻と言い争っていた連隊大佐が、苦悶の形相で死亡。妻が夫をののしって言った「ディビッド」とは何者?(実は聖書のダビデです)
入院患者:資産家の援助で開業したる医師の診察を受けに来た不審な親子。患者として入院していた資産家は、翌日、首を吊って死んでいました。
海軍条約文書事件:秘密条約案の写しを作るよう依頼された官僚が眠っている間に条約の原本は消え失せていました。これはスパイの仕業なのでしょうか?
最後の事件:さて、いよいよ「悪の天才」モリアーティ教授の登場です。欧州最大の犯罪組織の黒幕を追ったホームズは、ライヘンバッハの滝で相打ちになってしまうのですが・・。この滝に行ったことがあります。洞窟内を流れるアルプスの雪解け水の激流は凄い迫力。そこにたどり着くまでの散歩道は、カウベルの響くのどかな景色なんですけどね。
著者は「ホームズもの」に嫌気が指していて、ここで「打ち切り」にしたかったものの、ホームズを惜しむファンの声に後押しされて、シリーズ再開となったことは有名です。ただ「最後の事件」は長編として、伏線やらアクションやら何やらをもっと織り込んで書き込める内容ですね。これを短編で片付けてしまったのはもったいなく思えます。モリアーティ役にブラッド・ピットを起用するという映画版で楽しませてもらいましょう。
2010/7