りぼんの読書ノート

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小さくても偉大なこと(ジョディ・ピコー)

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『わたしのなかのあなた』の著者が、人々の心の中に潜むレイシズムをテーマとして書き上げた作品です。

 

物語はまず、目に見えるレイシズムから始まります。ホワイトパワー運動を信奉するネオナチ夫婦が、2人の新生児の突然死を、アフリカ人アメリカ人の看護師ルースによる殺人として訴えるのです。人種上の理由で担当から外されたことを恨んだルースによる謀殺だというのですが、もちろんこれは冤罪です。

 

若い白人女性である公費選定弁護人ケネディは、ルースが生涯に渡って耐えてきた被差別意識とのズレを感じながらも、彼女の冤罪を晴らすための論陣を張り巡らせます。新生児が抱えていた難病の存在を突き止め、無罪釈放は目前と思えた時に、ルースの爆弾発言が炸裂。実は彼女は「ある嘘」を隠していたというのですが・・。

 

アメリカでは、人種差別意識が起こした裁判においても、人種差別問題を論じてはいけないそうです。有罪無罪は客観的事実のみによって判断されるべきであることは当然としても、差別の存在を訴えることは良識的白人に居心地悪さを感じさせるというのです。しかしそれは、人々が無意識に抱いている差別意識を顕わにせず、深く眠らせておくだけのことなのかもしれません。

 

著者は後書きで、レイシズムの存在について無知であることは罪であると、言い切っています。ルースに爆弾発言をさせて「目に見えない差別」問題を取り上げた本書hあ、白人、黒人の双方から反発されるであろうとも述べています。それでもあえてこの問題を取り上げた、著者の勇気は賞賛に値します。

 

2019/7