りぼんの読書ノート

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数学者たちの楽園(サイモン・シン)

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本書の副題は「『ザ・シンプソンズ』を作った天才たち」。アメリカアニメ「ザ・シンプソンズ」と言われても、可愛げのないキャラクターしか思い浮かばないのですが、実際にこのアニメ制作には多くの「数学博士」たちが携わっているとのこと。アニメに隠された超難解数学の秘密を『フェルマーの最終定理』の著者が解き明かしていきます。

ちょっと見ただけでも、番組内に登場するのは「フェルマーの最終定理の偽回答」、「リーマン予想に基づく素数論」、「オイラーの定理」、「ヒッグズ粒子」、「ビッグバン」、「統計論」など、数学上の難問ばかり。大半がメインストーリーとは関わらないところでチョイ出しされているのですが、そこにはどのような意味があるのでしょう。

著者は「このアニメはインテリたちが自分自身を笑うために見る」という、ある番組製作者の言葉を紹介しています。「理系オタク」を意味する「ナード」たちが、コアなファンなのですね。実際にこのアニメには、ホーキング博士などが登場する回もあったとのこと。「マーベルのアメコミヒーローたち」とは対極にある世界のようですが、アメリカの奥の深さを感じる作品でした。世界は、一部の政治家が主張するような単純化ができるものではないのです。

2019/6