りぼんの読書ノート

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コンビニ人間(村田沙耶香)

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2016年上半期の芥川賞受賞作であり、授賞後も生活リズムを整えるためにコンビニバイトを続けているという異色の著者の作品を、ようやく読むことができました。

主人公は著者自身を彷彿とさせる36歳未婚女性の恵子。幼いころから普通の感情を持ち合わせていないことに苦しんできた恵子が見出した安住の地は、コンビニでした。完璧なマニュアルが存在しているコンビニは、自分が世界の「正常な部品」であることを実感させてくれるのです。オープニングスタッフとして入ったバイト生活も早や18年。

しかしそんな彼女の安住の地に紛れ込んできた「ダメ男」が、彼女のリズムを狂わせてしまいます。自意識を持て余している社会的敗残者であり、他者を攻撃することで自分を守っている中年男性の存在は、自意識を薄めることで自己防衛に専念している中年女性にどのような影響を与えるのでしょう。

恵子は突拍子もない判断をするのですが、もちろんそれは世の中の「普通」とはかけ離れています。しかし本書の凄さは、読者に対して「普通とは何なのか」を考えさせてしまうことにあるのでしょう。自分たちは本当に「普通」なのか。彼女たちに「普通」を強いることの意味は何なのか。実は「普通の人なんていないのでしょう。違和感こそ大切なものなのかもしれません。

2019/6