「ビデオゲーム」をテーマとして書かれた作品を編んだ、楽しいSFアンソロジーです。「この新しいメディアのおかげで、受動的な参加者ではなく、本当の主人公になれた」という、『ゲームウォーズ 』の著者アーネスト・クラインによる序文の言葉が、すべてを物語っています。
「リスボーン(桜坂洋)」
タイトルは、倒されたプレイヤーが別の地点で復活して再スタートすることだそうです。殺害された途端に殺人者の精神に復活する男は、無敵なのでしょうか。それとも過去を持てない無力な存在なのでしょうか。
タイトルは、倒されたプレイヤーが別の地点で復活して再スタートすることだそうです。殺害された途端に殺人者の精神に復活する男は、無敵なのでしょうか。それとも過去を持てない無力な存在なのでしょうか。
「救助よろ(デヴィッド・バー・カートリー)」
ゲームに没頭しすぎて大学も中退し、連絡も取れない恋人を探しに行った女性の周辺では不思議なことが起こっています。ゲーム世界が現実を侵食しているようなのです。現実世界の平凡な存在でいるか、ゲーム化した世界の王と女王になるか、思案のしどころですね。
ゲームに没頭しすぎて大学も中退し、連絡も取れない恋人を探しに行った女性の周辺では不思議なことが起こっています。ゲーム世界が現実を侵食しているようなのです。現実世界の平凡な存在でいるか、ゲーム化した世界の王と女王になるか、思案のしどころですね。
「1アップ(ホリー・ブラック)」
ネットゲームの友人の葬儀に出席した、顔を合わせたこともない友人たちが不思議なメッセージを受け取ります。彼は本当に亡くなっているのでしょうか。そして彼の目的は何なのでしょう。
ネットゲームの友人の葬儀に出席した、顔を合わせたこともない友人たちが不思議なメッセージを受け取ります。彼は本当に亡くなっているのでしょうか。そして彼の目的は何なのでしょう。
「猫の王権(チャリー・ジェーン・アンダース)」
新種の病気で脳に障害を負った、女性の正気を保つために買い与えたシミュレーションゲームは、現実世界の難問を解くために開発されたのかもしれません。それとも新種の病気自体が何かの陰謀なのでしょうか。
新種の病気で脳に障害を負った、女性の正気を保つために買い与えたシミュレーションゲームは、現実世界の難問を解くために開発されたのかもしれません。それとも新種の病気自体が何かの陰謀なのでしょうか。
「神モード(ダニエル・H・ウィルソン)」
空の星が消えたことを手始めにして、世界が少しずつ消滅していく中で、最後まで残されたのは恋人の手のぬくもり。これは現実崩壊なのか。それとも仮想空間なのか。途中まではフィリップ・K・ディック調でしたが、ラストはウィリアム・ギブソンの世界のようでした。
空の星が消えたことを手始めにして、世界が少しずつ消滅していく中で、最後まで残されたのは恋人の手のぬくもり。これは現実崩壊なのか。それとも仮想空間なのか。途中まではフィリップ・K・ディック調でしたが、ラストはウィリアム・ギブソンの世界のようでした。
「リコイル!(ミッキー・ニールソン)」
オフィスビルの襲撃事件に遭遇した男が、犯人たちを殺すことなく人質を救うために選んだ手段は、自分を犠牲にすることでした。ラストのオチが秀逸です。
オフィスビルの襲撃事件に遭遇した男が、犯人たちを殺すことなく人質を救うために選んだ手段は、自分を犠牲にすることでした。ラストのオチが秀逸です。
「キャラクター選択(ヒュー・ハウイー)」
『ウール 』に始まる「サイロ3部作」の著者による作品です。夫が夢中になっているゲームをプレイしてみた産休中の妻は、ポイントを稼ぐのではなく、誰も死なない方法を試みます。これは何に必要とされる能力だったのでしょう。
『ウール 』に始まる「サイロ3部作」の著者による作品です。夫が夢中になっているゲームをプレイしてみた産休中の妻は、ポイントを稼ぐのではなく、誰も死なない方法を試みます。これは何に必要とされる能力だったのでしょう。
「ツウォリア(アンディ・ウィアー)」
『火星の人 』のDIY感とは趣が異なる作品です。遠い昔に十億秒かかる処理を命じたプログラムが全能になって戻ってきて、主人公の望みを叶えようとするのですが・・。
『火星の人 』のDIY感とは趣が異なる作品です。遠い昔に十億秒かかる処理を命じたプログラムが全能になって戻ってきて、主人公の望みを叶えようとするのですが・・。
「時計仕掛けの兵隊(ケン・リュウ)」
女性賞金稼ぎが、苦労して捕まえた少年を逃がそうとするのは何故なのでしょう。実はこの少年の正体は、見かけ通りのものではなかったのです。『紙の動物園』の著者らしく、深い余韻を残す作品です。
女性賞金稼ぎが、苦労して捕まえた少年を逃がそうとするのは何故なのでしょう。実はこの少年の正体は、見かけ通りのものではなかったのです。『紙の動物園』の著者らしく、深い余韻を残す作品です。
2019/5