りぼんの読書ノート

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マリー・アントワネットの首飾り(エリザベス・ハンド)

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ヒラリー・スワンク主演で2006年に公開された映画のノヴェライズです。この女優、意志の力でやみくもにチャンスをつかもうとする女性としては適役ですが、没落フランス貴族女性というイメージは浮かばないのですが、どうだったのでしょう。

いわゆる「首飾り事件」はマリー・アントワネットの名を騙った一味による詐欺であり、王妃は完全な被害者にすぎません。しかし「王妃の陰謀説」を払拭できなかったために、王室の評判は貶められ、フランス革命の原因のひとつとされています。

本書の特徴は、事件の首謀者とされるジャンヌ・ド・ラ・モット・ヴァロアを、従来の「稀代の悪女」ではなく、ヴァロア家再興を願う闘志として描いたことにあります。かつてのフランス王室の末裔でありながら、幼い時に家族も屋敷も家名も失った無念を晴らそうとしたというのです。不実な夫ニコラスは頼りにならず、影を秘めた美青年レトーと組んで、ロアン枢機卿をペテンにかけるのですが、もちろんそれは破滅への道でしかありません。

本書ではまた、マリー・アントワネットも民衆の苦しみを理解できずに苦しんだ女性として描かれています、ともに不幸な2人の女性が法廷で対決する場面が見せ場ですね。そして、2人の女性を不幸な立場に追い込んだ男たちの身勝手さが浮き彫りになってくるようです。おそらく映画でもそうだったのでしょう。

2019/4