りぼんの読書ノート

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オペレーションZ(真山仁)

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日本国の借金は千兆円を超え、基礎的財政収支は赤字が続いています。2018年度予算で見ると、63兆円の税収に対して74兆円の支出でマイナス11億円。これに含めて23兆円の国債利払いをまかなうために34兆もの新規国債を発行しているのですから、不健全そのもの。こんな状態が長続きするはずはありません。そこまでは誰でもわかっているのですが、構造改善は着手されてもいないのです。国債が市場で吸収されなくなったり、売り浴びせられて暴落したりすると、ギリシャの100倍規模の国家が破綻がするというのに。

ハゲタカの著者による本書は、「歳出半減」というミッション・インポッシブルに本気で挑んだ総理が登場するという物語。密命を帯びた官僚たちによるプロジェクト名が「オペレーションZ」であり、これは「オズの魔法使い」を意識したネーミングとのこと。

しかしこの最終ミッションは、想像に難くない激しい抵抗に遭うのです。政権争い、官僚の抵抗、メディアからの批判、そして世論の反発。歳出半減のためには、その2/3を占める社会保障費と地方交付金に手をつけないといけないのですが、弱者切り捨てとか地方無視という声が高まるのは必然ですね。なんといっても消費税を2%あげることすら、簡単にはできない状況にあるのですから。

著者は、小説内に小松左京を思わせる小説家を登場させて財政破綻後の日本の姿を描かせていますが、『日本沈没』に匹敵するほど厳しい未来図といえるでしょう。破綻国家が荒廃することは、ソマリアアフガニスタン、シリアなどの例を見れば一目瞭然なのですが。日本的なセーフティネットとして、地域の助け合いや住民自治の精神が機能して欲しいとは思うものの、そこだけに期待してはいけませんね。しかし、歳出半減を打ち出した政党は、選挙に勝てないだろうなぁ。

2019/3