りぼんの読書ノート

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あきない世傳 金と銀4 貫流篇(高田郁)

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シリーズ第4巻では、幸に大きな変化が訪れます。大阪天満の呉服屋「五鈴屋」の奉公人から、ダメ息子の4代目長男に嫁いだものの、夫はまさかの急死。商いに聡い一方で情に薄い5代目次男と再婚したものの、幸の商才を疎むようになっていた夫は、取引先の信用を失って失踪。しかし彼は、きちんと辞任と離縁の手続きを取っていただけでなく、9年前に作家を目指して家を出ていた三男に、店と幸を託していたのでした。

もともと幸に好意を抱いていた三男・智蔵は、商売は幸に任せることにして6代目就任を約束。幸ちゃん、この時まだ21歳。まさかの3兄弟との連続結婚ですが、もともとこれは初めから読者も望んでいた展開ですね。3兄弟の祖母であるお家さんの富久は、2人の祝言を見届けてなくなります。ここまでで、物語の区切りがひとつついた感じです。

となれば、この後は幸の商才が花開いていくばかり。まずは東北地方に行商している近江商人と手を組んで販路拡大。これは商社を起用して商品を輸出するようなものですね。近江商人というと天秤棒で担ぎ売りの印象がありますが、大商人ともなると天秤棒で運ぶのはサンプル生地だけで、商品は船で大量移送していたとのこと。次いで、かつて4代目と対立して五鈴屋を去っていた2人の手代の窮状を聞いて、彼らに在庫品の委託販売を依頼。

さらに浄瑠璃人形に衣裳を提供し、自らがモデルとなって流行を作り上げます。表紙の絵は、浄瑠璃小屋の出口付近でさりげなく、人形と同じ「桑の実色の着物」を着て佇んでいる幸の姿です。美人は得ですね。そしてついにM&Aにも乗り出すのです。これまで五鈴屋の味方になってくれていた老舗の桔梗屋が、跡継ぎもないために店を売りに出したところ、その相手が販売方針継続や従業員再雇用の約束を反故にするゲス野郎だったため、幸が代わりに手を挙げるのですが・・。

モノが売れない享保デフレ期に、女名前禁止の大坂にあって、知恵を武器に「商い戦国時代」を渡ってゆく武将の如き幸の活躍が楽しみです。

2018/7