りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

東の果て、夜へ(ビル・ビバリー)

イメージ 1

ロスで麻薬密売所の見張り役を務めていた15歳の少年イーストは、警察の手入れの通報に失敗したことから、ラストチャンスとして新たな任務を言い渡されます。それは、法定で証人に立つ予定の裏切り者を、休暇先で始末するというものでした。足がつきやすい飛行機を避け、イーストと仲間たちは車で3000km離れたウィスコンシンへと向かいます。

イーストに同行するのは、13歳ながらいっぱしの殺し屋を気取る不仲の弟・タイ、最年長ながら間が抜けている学生崩れの20歳のマイケル、コンピュータ・オタクの17歳のウォルター。はじめてロスの黒人街の外に出たイーストは、北米大陸大自然や白人中心の社会に触れるのは初めてなのですが、彼が一番しっかりしているのです。

クライムノヴェルからロードノヴェルへと転調した物語は、仲間割れや残忍な弟との対決の末に任務と旅を終えた後に、中西部のオハイオにとどまったイーストの成長物語へと再転調。しかし過去は再び彼を捉えに来るのです。どうやら初めの任務にも裏の意味があったようです。暴力的な世界に生まれ育ちながら、暴力に違和感を覚えているイーストに感情移入しつつあった読者としては、彼の成長と再生に期待したいところなのですが・・。

もっとも、このような作品に「読後の爽快感」などを求めるべきではないのでしょう。それでも本書がデビュー作という著者が、今後どのような物語を紡ぎあげていくのか、イースト少年の「その後」に触れることはあるのか、気になるところです。

2018/7