りぼんの読書ノート

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太陽の棘(原田マハ)

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戦後間もない頃に、東京美術学校出身の画家を中心に誕生して「ニシムイ美術村」。肖像画や風景画の依頼に応えて生活の糧を得ながら、戦争によって荒廃した沖縄文化や美術の復興に奔走していた画家たちと、沖縄基地に勤務した米軍の若き軍医・エドワードの交流を描いた、実話をもとにした作品です。

独特の絵画に感動したエドワードは、占領者と被占領者という立場の違い、言葉や文化の違いを越えてメンバーと交流を深めるのですが、越えられない壁もあったのです。米軍占領下で沖縄人の人権も保全されず、生活のためには妻が米兵相手に身を売るような状況においては、若い軍医ができることなど知れています。

やがて帰国の途についたエドワードでしたが、占領下の沖縄の苦悶と、画家たちの熱気あふれる創作活動に触れた体験は、その後も彼の心に「棘」として残り、沖縄の太陽のように彼の身を焦がし続けたのでした。

エドワードのモデルとなったスタインバーグ博士の「ニシムイ・コレクション」は、2009年に沖縄美術館に里帰りを果たしており、著者はその展覧会を見て本書の着想を得たそうです。表紙となっている絵は、スタインバーグ博士の若き日の肖像画なのです。

2018/7