りぼんの読書ノート

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紫式部の娘。賢子はとまらない!(篠綾子)

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平安期の歴史・文学に造詣の深い著者が、一皮むけたくだけた作風で著した賢子がまいる!の続編です。

母の紫式部から引き継いだ、皇太后彰子のもとでの宮仕えも2年目に入りました。すっかり宮中に馴染んだ賢子が気になっているのは、新人女房の藤袴。教養深い美少女なのに、なぜか世間知らずでイジメにあう藤袴を助けようとする賢子ですが、なぜか母は彼女と関わらないように警告するのです。

藤袴の正体と、賢子らが彼女と結ぶ深い友情が本書のメインテーマですが、背景には当時の政治的背景が色濃く漂っています。父親・道長の強引な権力主義に対抗するネットワークを築こうとしている彰子の間諜役も母から引き継いだ賢子でしたが、道長の陰謀によって窮地に追い込まれてしまいます。皇太后彰子や、小式部、小馬、良子らの女性陣は、賢子と藤袴を守り切れるのでしょうか。

本書は「歌物語」としても優れており、世に残る名歌が次々と名場面で登場。前巻で最悪の出会い方をした道長の養子・兼高は、賢子に恋してしまったようですが、2人の関係はどう進展していくのでしょう。「馬」と名乗る中年女性から賢子が認められる場面も、なかなか感動的。

史実では故一条天皇と彰子の願いを踏みにじって、道長の孫たちが3代に渡って帝位に就くことになるのですが、こうなったら歴史を捻じ曲げてでも賢子ら女性陣に頑張って欲しくなります。

2018/6