りぼんの読書ノート

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四十八人目の忠臣(諸田玲子)

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忠臣蔵」を題材とした作品は数多くありますが、本書の主人公は意外な人物です。たまたま赤穂浅野家の江戸屋敷に奉公することになった美女きよなのです。

江戸詰めの藩士・礒貝十郎佐衛門と恋仲になって夫婦の約束をしたところで、浅野内匠頭の刃傷事件が起こってお家断絶。赤穂と江戸を忙しく行き来しながら善ン院後策を画策する恋人の身を案じながらも、きよは未亡人となった瑤泉院との連絡役を務めたり、密かに吉良邸を見張ったりする程度のことしかできません。

そして討ち入りの日が訪れ、遺臣たちは本懐を果たすものの全員が切腹。恋人を失った悲しさに打ちひしがれるものの、きよの活躍はここから始まります。彼女は、男にはない女の武器を使って、浅野家への忠義を全うするのです。

伝承によれば、有力旗本の養女となって甲府宰相・綱豊の御殿に奉公に上がり、綱豊が6代将軍・家宣となったのちに寵愛を独占して7代将軍・家継の聖母となった喜代こと月光院は、間部詮房新井白石の支援を得て、赤穂浅野家の再興に貢献したとされています。知られざる月光院の前半生を赤穂浪士伝承を結びつけた、著者の視点が新しい作品です。

2018/6