りぼんの読書ノート

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テスタメントシュピーゲル 3下(冲方丁)

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著者が10年に渡って書き継いできた「シュピーゲル・シリーズ」がついに完結を迎えました。世界中のテロが交差する近未来都市ウィーンで、機械化された特甲少女たちが闘うシリーズは、著者の最後のライトノベルになるとのことです。

壊滅の危機に陥れた都市を、自らが「ブリリアント・モデル」なる集権型システムと一体化して支配しようとするマッド・サイエンティスト。その後ろ盾となっているファシスト的政治家たち。枢機卿の顔を有する死の商人リヒャルト・トラクル。それぞれ少女たちの過去と因縁を有する戦術的指揮官のロートヴィルトとホイテロート。類まれなるハッキング技術を駆使するサードアイとシャーリーン。そして彼らに操られる特甲猟兵の少年たち・・。

「レベル3」の虚無に堕ちた「紫火・鳳」を目覚めさせたのは、不動の信念を有する「黒犬・涼月」でした。彼女に象徴される「ガラテア・コンプレックス」の繋がりの力こそが、「ブリリアント・モデル」への対抗軸となっていきます。そしてダイヤを焚きながら戦火の街を疾走する、情報汚染を免れた骨董品の機関車を少女たちは守り抜くのです。そこには「赤犬・陽炎」も「白犬・夕霧」も、「青火・乙」も「黄火・雛」も再結集。

これで最後ということで、著者は破壊力を思いっきり全開させていますね。やがて熾烈な戦いの中で因縁を断ち切った少女たちは、最終章で新たな旅立ちを迎えます。全員が普通の少女として旅立って欲しかったのですが、これだけ特殊能力を有していると一斉に抜けるわけにも行かないのでしょう。2人は特甲児童として憲兵と公安に残り、2人は関わりある部署へ移動し、2人は留学することになります。願わくは「報いられざることひとつとしてなからんことを」。

2017/10