新潟の事業家で年上の妻が交通事故で意識不明に陥り、義理の息子たちから会社を追い出された54歳の亮介。彼が新たに得た職は、バブル期に建てられて廃墟のようになっている北海道のリゾートマンションの販売。リゾートとは名ばかりで、劣悪条件で杜撰な建築物を売るというのは、ほとんど詐欺同前の仕事でした。
そこを訪れたのは、銀座のキャバレーで出会った29歳の紗希。彼女は北海道出身のアイドル候補だったものの、10年間芽が出ず、事務所からクビを言い渡されたばかりでした。彼女が売れなかった原因は、押しの弱さにあったのでしょうか。不遇な男性に対する包み込むような優しさが、彼女の魅力だったようなのです。
「狂気を孕んでゆく女の純粋は、男を搦めとり・・」という帯のフレーズが、そのまま再現されていく物語のラストの展開が衝撃的でした。とりわけ、不動産会社を辞めた亮介が、新たな事業に挑戦しようとする矢先だっただけに・・。やはり「それ」は「愛」ではありません。
2017/4