りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2017/1 また、桜の国で(須賀しのぶ)

ライトノベル作家から出発した須賀しのぶさんは、2013年には『芙蓉千里』三部作でセンスオブジェンダー賞大賞受賞、2016年には『革命前夜』で大藪春彦賞受賞・吉川英治文学新人賞候補となり、近刊の『また、桜の国で』では堂々の直木賞候補に挙げられるに至りました。勢いのある女性作家のひとりです。

アレクサンダー・マクラウドは、カナダの短編の名手だったアリステア・マクラウドの息子です。父親と同様に、鋭い人間観察に基づいた完成度の高い短編の作者ですが、遅筆で寡作な点も似ているようです。
1.また、桜の国で(須賀しのぶ)
第二次大戦前夜、ポーランド日本大使館に外務書記生として派遣された日露混血の青年は、ナチス・ドイツソ連赤軍によって蹂躙された国民の悲劇を目の当たりにして、人間としての生き方を自問することになります。ワルシャワ蜂起をクライマックスとする、スケールの大きな反戦小説です。

2.異国の出来事(ウィリアム・トレヴァー)
アイルランドの短編の名手でノーベル文学賞の候補にも挙がった著者が、本年11月20日に88歳で逝去されたそうです。ご冥福をお祈りいたします。本書は、著者には珍しくアイルランドの外の「外国」を舞台にした作品からなる短編集です。

3.煉瓦を運ぶ(アレクサンダー・マクラウド)
同じカナダでも、ケープ・ブレトン島を舞台にした作品を書き続けた父親に対し、息子が綴るのは、自身が育った地であるオンタリオ州の工業地帯です。短編群の底流にあるのは、衰退しつつある町の将来に不安を抱く弱者たちの想いのようです。


2017/1/30