30年もの間続いているシリーズの第14弾です。2014年1月に出版された『蒼猴ノ巻』以降を最後に読んでいませんでしたが、その間に3作も刊行されていました。
呪(シュ)に通じた陰陽師・安倍晴明と、彼の親友であり笛の名手の好漢・源博雅が、「ゆこう」「ゆこう」の決め台詞とともに都を騒がす怪異を解決しにいくというスタイルは、既におなじみ。「偉大なるマンネリ」は健在なのですが、今回は蘆屋道満を主人公にした作品が3編含まれています。初めてではありませんが、いつもより多いですね。
蘆屋道満といえば、明智小五郎に対する怪人二十面相、ブラックジャックに対するドクター・キリコ、若大将に対する青大将という感じのライバルなのですが、決してシンプルな悪役ではありません。官に対して民、在京に対して放浪、清浄に対して混沌、救済に対して放置と、晴明とは主義主張が異なっている存在なのです。
「山神の贄」:常陸の山中で1年前に夫を失ったという女性と出会った道満は、女性の持っていた酒をねだるのですが・・。
「筏往生」:上人と御仏の使いの邂逅を目撃した男は、翌年何を見ることになったのでしょう。これも道満が主人公です。
「度南国往来」:清明が、5日前に亡くなった男の蘇生を予言します。
「花の下に立つ女」:博雅が六条河原院の美しい桜の下で見たという、物言わず悲しげな美しい姫の正体は?
「屏風道士」:摂政の兼家が入手した屏風の中に入ってしまった仙人を、清明と博雅が迎えに行く物語。
「産養の磐」:諏訪から京へと向かう途中で山道に迷った女が、磐座に供えられていた食物と酒を口にしたところ、代わりに山神の贄として供えられそうになるのですが・・。道満も「酒のため」と嘯きながらも、結構おせっかいのようです。
2016/12