りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

マドンナ(奥田英郎)

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日本で一番大変な日常をすごす「課長さん」たちを主人公に据えた短編集です。モー娘のなっちや、ロッテの黒木投手なども登場しますので、時代は2000年代の前半でしょう。しかし、ここに登場する「課長さん」たちは、かなり現実世界からずれているようです。キャラ設定がほとんど昭和。21世紀には、こんな人たちはほとんど絶滅していますよ。

「マドンナ」
年甲斐もなく若い総合職の女性にほのかな恋心を抱く課長さん。独身男性の部下と張り合うのですが、そんな社内の疑似恋愛が成就することなどありませんよね。まあ、この程度の課長さんなら、現実にもいそうです。

「ダンス」
高校を卒業する息子の希望進路がダンサーなんて許せない。一方で、ワンマン部長にたてつく同期の課長が降格させられそうになる問題を解決しようと躍起になる課長さんでしたが・・。ここまでわかりやすく、公私に渡って部下に忠誠を求める上司なんて、見たことありません。

「総務は女房」
営業から総務に異動になった課長さんは、業者と癒着している総務のあり方を改革しようとするのですが・・。そもそも、公然と業者と癒着して裏金を作っているなんて、犯罪ですよ、犯罪!

「ボス」
同い年の女性を部長に迎えた課長さんは、これまでの営業部のバンカラ気質を変革しようと、男社会に毅然として立ち向かう女性上司に反感を抱くのですが・・。これまた、こんなに露骨に女性を蔑視して男社会を作り上げている会社なんて、男女雇用均等法以前の世界です。

「パティオ」
大々的に開発した「港パーク」で集客イベントをする部署に回された課長さん。閑散としたパティオでいつもひとり静かに過ごしている老人の姿が、田舎で一人暮らしをしている老父の姿と重なって見えてくるのですが・・。

2016/3