りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ブリリアンス(マーカス・セイキー)

イメージ 1

総人口の1パーセントが特殊能力をもつ「超能者」として生まれるようになった世界。彼らの特殊能力は、「X-MEN」のような派手なものではなく、高度なパターン分析力のようなものなのですが、侮ってはいけません。株価の動向を読みっとって株式市場に破滅的な影響をもたらしたり、筋肉の動きから相手の行動を先読みして際だった格闘能力を示したり、感情の動きから完璧な嘘発見能力を持ったりする、いわば天才集団なのです。

それでも超能者を恐れる一般人は、彼らを子供時代から徹底的に管理する体制を築き上げています。しかし、それを不満に思う一部の超能者たちはテロリストとなり、当然、それを取り締まる組織もできています。本書の主人公クーパーは、自身も超能者でありながら「悪の超能者」を排除する組織に属しており、最大のテロリストであるジョン・スミスが計画しているという破滅的なテロを防ごうとするのですが・・。

本書のテーマは、序盤に出てくる「魔女を火あぶりにした男は、人が焼け死ぬのを見たかったのだろうか、それとも、自分が悪魔と闘っていると信じていたのだろうか?」という問いに集約されているのでしょう。誰もが「自分の信じる正義」を追求することが社会の対立を煽っていることを知り、さらに「敵の実態」を知るにつれ、クーパーの信念も揺らいでいくのです。

ラストは、よくある「権力側の陰謀」のようになってしまいましたが、深いテーマですね。現実の社会で起きている「対立構造」は解消可能なのかどうか、考えさせられてしまいます。

2016/3