りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2016/2 マルコーニ大通りにおけるイスラム式離婚狂想曲(アマーラ・ラクース)

1位に上げたのは、アルジェリアに生まれてローマに在住している著者による、「異文化の衝突」をテーマにしたコメディです。現実世界での移民問題は、もはや「笑える状況」ではないのですが・・。
山本弘さんの「ビブリオバトル」を扱った小説は、2冊とも新鮮でした。著者は「SFを喧伝するため」と言っていますが、読書人口そのものが減っているようですから、こういう運動は大歓迎です。
1.マルコーニ大通りにおけるイスラム式離婚狂想曲(アマーラ・ラクース)
互いに惹かれあう、素人スパイとしてチュニジア人に偽装したイタリア人男性と、エジプト移民の既婚女性を隔てるものは、「異文化の壁」だけなのでしょうか。イタリア社会と移民社会の間のトラブルも、また双方が抱える内部の諍いも合わせて笑い飛ばす本書は、コミカルではあるものの本質的な問題を提起しているようです。ただし現実の移民問題は、既に「笑いのめせるレベル」を超えてしまったようです。

2.アルモニカ・ディアボリカ(皆川博子)
近代警察組織が生まれる前の18世紀ロンドンで、盲目の治安判事として尽力したジョン・フィールディングを、やはり実在の解剖学者ジョン・ハンターをモデルにした外科医ダニエルと組み合わせた歴史ミステリです。謎の文字が胸に記された身元不明の死体が、行方不明だったダニエルの元弟子だったことから始まる捜索は、英国王ジョージ3世や、独立戦争を戦っているフランクリンとも絡む、国家的スキャンダルへと広がっていきます。

3.円卓(西加奈子)
公団団地で、祖父母、両親、三つ子の姉と8人暮らしの渦原琴子、通称こっこは小学3年生。家族全員から愛されている一方で、にぎやかな家族に辟易していて、好きな言葉は「孤独」。まだ、憧れたり真似したりてもいいことと悪いことの区別がついていなかった少女が、相手の気持ちになって考えて想像することの大切さを知ることになる、ひと夏の体験を記した物語です。



2016/2/28